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Thank You for Tons of Your Love♪ Vol. 2
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何からお話しするべきか迷いましたが、
まず龍之進に温かいご声援を下さった多くのみなさま方に心よりの感謝の言葉を。

そして何より13年間、私達家族に両手いっぱい溢れるほどの愛と幸せをくれた
龍之進に限りない感謝の言葉を述べたいと思います。

阪神淡路大震災の15周年を迎えた1/17の朝、
龍之進は一人、旅立って行きました。





Thank You for Tons of Your Love♪ Vol. 2_e0166336_1857045.jpg1/13のブログで「結果が良ければ自宅療養に切り替えられる」と書きました。
が、結果は更に悪化していました。
貧血症状が一段と進んでいたのでした。

唯一改善されていたのは肝機能関連。
でも貧血の数値があまりに悪く、総体的には悪化の一途でした。

ただ龍之進自身に元気が出てきたことと、
病院生活による精神的なストレスを考えて先生は自宅療養に切り替えましょう、と勧めて下さいました。
飲み薬を何種類も処方していただき、夕方連れ帰りました。

自宅に戻るとその日のお昼までつけていたという点滴の為の留置針が刺さっていた脚、
後ろの右ですが、歩けなくなっていました。

<この脚です>
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慌てて病院に連絡し、再び連れて行きました。

ずっと刺さっていたから違和感があるのだろうということで、
しばらく様子を見ることになりました。

龍之進はおしっこをする時必ず左脚を高くあげます。
つまり右脚が軸になるわけですが、その右脚が地面うまくつけられず、
引きずった状態で全く力が入らないので何度もトイレで倒れてしまいました。
私が支えてあげて、やっとなんとかすませました。
痛々しくて涙が出ました。

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翌朝は少し脚が動くようになりました。
まだ引きずってはいましたが、前日よりは力が入るようになったようです。
このまま改善されていけば、と願いながら投薬しました。
相変わらず薬は大キライ。
小一時間かかって全部飲ませ、また脚の件で病院に連れて行きました。

その日の夜、11時頃まではその状況でした。
食欲はなく、一切口にしませんでしたが、
少しずつ歩けるようにもなっていました。
最後に自力でトイレに行ったのがその時間。
ところがそのすぐ後突然起き上がることも出来なくなりました。

Thank You for Tons of Your Love♪ Vol. 2_e0166336_1858297.jpg夜中の12時過ぎ。
もちろん病院は開いていません。
何種類もの薬の中の、貧血にいいと言われたビタミン剤を飲ませました。
一晩中、ずっとついて看病していました。

横たわったまま、苦しそうに息をする龍之進。
時折水を飲ませると、少しだけ飲んでくれました。
何度か起き上がろうとはしますが、力つきてしまい、諦めていました。
一度横たわったままおしっこをしてしまった時はうんと力を込めて起き上がろうとしました。

13年も一緒にいるとこの子の性格は手に取るようにわかります。
超きれい好きな龍之進。
濡れた毛布にそのまま横たわっているのが許せないのでしょう。
すぐに気付き、取り替えてあげました。

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「しんちゃん、だいじょうぶ♪」

子供の頃からずっとびびりんで、人も犬も大きな音も恐がる子でした。
何かある度に私は
「しんちゃん、だいじょうぶ♪」
と言い続けてきました。
だからその言葉の意味は理解しています。
理解しているけど、恐いものは恐い。
だから、
「おかぁさんが『だいじょうぶ』、と言ったらいつもだいじょうぶじゃない。
おかぁさん、しんちゃんにウソついたことないでしょ?」とその後に続けてきました。

犬にウソをついてはいけない、と小さい頃に習いました。
おやつをあげるフリをして、実際にはあげないでからかったりとか、散歩に行くフリをしていかないとか。
そういうことをすると信頼してもらえないよ、と言われました。
この歳になってもその教えは一度も守らなかったことはありませんでした。

「だから心配しないで。必ずおかぁさんが治してあげるから。またすぐに元気になるよ!約束する!」
・・・・・初めて、ウソをつきました。

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病院が開く時間に合わせて支度をしていると
横たわったまま、突然大量の水状の便がでました。
おシリがとても汚れてしまいました。
慌てておシリだけシャワーで洗いましたが、
その時一瞬頭が下になってしまい、
クラクラしたような眼をしました。

・・・・・今でもその眼が忘れられません。

病院に駆け込み、先生に見せた瞬間にその場の空気が一気に張りつめました。
ショック症状を抑える為の注射が打たれ、そのまま奥の治療室に連れて行かれました。
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「出来る限りのことは全てやります。
が、いつでもすぐに駆けつけられるようにご自宅で待機していて下さい。」

胸の中で何かとてつもなく大きな重いものがズシン、と低い音をたてて落ちました。

奥に連れて行かれて先生と二人きりになった診察室を出る直前、
「顔、見ていきますか?」と聞かれました。

これが最後になるかも知れませんよ、という意味だったのでしょう。
はい、と小さく返事をし、奥へ連れて行ってもらい、
診察台の上の小さな龍之進に「しんちゃん、だいじょうぶ♪頑張ってね。」といつものおまじないをかけました。

主人が車の中で鉄之介と一緒に待っていました。
「覚悟・・・してくださいって・・・」
それ以上は何も言えませんでした。
重苦しい空気の中、家路につきました。

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お昼近くになって、電話が鳴りました。
とてつもない恐怖に襲われ、一瞬の躊躇ののち、
それでもとらずにいられない手が受話器に伸びました。

「だいじょうぶです、いいお知らせですから。龍之進ちゃん、少し元気になって缶フード(ペースト状)をちょっとだけ舐めて食べてくれました。」

最悪の知らせかとおののく私の気配を察してか、
安心させる言葉を言ってから次を続けてくれました。
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食べる元気が出たの?起き上がることすら出来ないあの状態で?
信じられない言葉でした。
そしてこの信じられない龍之進の行為は、後になってとてつもなく大きな意味を持っていることがわかりました。

「わかりました、ありがとうございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。」
電話を切りました。

19歳で喫煙者となって初めて、禁煙をしました。

過去吸わなかった最長記録はイタリアから帰りの便でエンジントラブルの為離陸前2時間缶詰になり、
その後13時間のフライト、前後の搭乗時間などを含め計16時間余りでした。
「吸わなかった」のではなく、「吸えなかった」というのが正しい表現です。

母の部屋にある祖父母や叔父や以前飼っていたわんこ達の遺影が飾ってある場所に行き、
「しんが助かるなら一切煙草はやめます。だからどうか、力を貸して下さい。」
と涙ながらに訴えました。
実際に、丸二日間、つまり龍之進が亡くなるまでこの禁煙は続きました。
彼がこと切れた後、しばらく号泣して気持ちが落ち着いてから、
ふっとそれまでキープし続けた様々な力が抜けて
「効かなかったか・・・無理よね」と久しぶりの1本に火をつけました。

Thank You for Tons of Your Love♪ Vol. 2_e0166336_19161126.jpgその夜は24時間完全看護となりました。
夜中でもいつ電話が鳴るかとおびえたまま、よく眠れない一夜を過ごしました。

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翌朝も電話を待つ自分がいました。
病院からの電話に、ベルが1回なったかならないかで出た私に
「昨日と変わらない状態です。今後の方針をお話ししたいので、午前の診療時間が終わった頃ご家族でいらして下さい。」
と言われました。

お昼過ぎに主人、母、鉄之介を連れて行きました。
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<病院のケージで横たわる龍之進を心配そうに覗き込む鉄之介>

龍之進は昨日と比べて明らかに、私の声に反応しなくなっていました。
「ここで出来ることは全てやりました。これ以上は設備の整った施設で精密検査を受け、その上での治療以外は不可能です。ここまで貧血状態ですと輸血をするべきなのですが、そこなら輸血もやっています。そちらをご紹介するという方法がありますが、かなり高額ですので飼い主さんの負担もありますし・・・」とのことでした。

設備の整った施設・・・日本動物高度医療センターというところです。
一般受付はしておらず、個人病院等で対応しきれない場合にその病院からの紹介でのみ受診することが出来ます。
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この時、その場にいた誰もが恐らく同じことを考えていたでしょう。
「もう、何をやっても助からない」

私自身そう思いながら、「はい、ではそちらをご紹介ください。」と答えていました。
とことん、出来ることは何でもしたかったのです。
お金のことなどいくらかかっても、仮に一生借金を抱えても構わない、とすら思いました。

早速そちらへの予約を入れてもらったところ、現在は輸血が出来ないことがわかりました。
「では、そちらの検査は受けるとして、別に輸血が出来る病院を探して下さい。」
とお願いしました。

「わかりました。探しておきますのでいったんご自宅にお帰りいただいてお待ちください。
夕方点滴が終る頃迎えにきて下さい。予約は明日の朝9時に取りましたので、今日は龍之進ちゃんをおうちに連れて帰ってあげて、明日の朝、直接現地へ行って検査を受けて下さい。」

いったん自宅に戻りましたが頭の中は真っ白でした。

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ふと、耐え切れなくなってずっと話を聞いてくれていたえのきママに電話をしました。
えのきママからは前日、「今晩も土曜日も日曜日もずっと空けておきますから私に出来ることがあったらいつでも連絡ください。」とメールをもらっていました。

「しん・・・もうダメみたい。」
そんな言葉から始まりました。

「明日大きい病院で精密検査することになって、今日は夕方うちに連れて帰るの。
でも、たぶんもうこれで最後になると思うから、逢いにきてもらえないかな。」と言うと、
「わかりました、夕方伺います。」
と答えてくれました。

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再び病院に迎えに行きました。

「しんちゃん、おかぁさん、迎えに来たよ♪おうちに帰ろう。」と声をかけたところ、
小さく反応してくれました。
動かしたせいで龍之進に少しでも苦痛を与えないようにそのまま大切に大切に抱きかかえ、
家路につきました。

輸血をしてくれる病院が見つかったかどうかはもう聞きませんでした。
見つかっていれば先生の方から言って下さるでしょう。
それよりも一刻も早く大好きな自宅に連れ帰ってあげたいと思いました。

戻ってほどなくするとえのきママがとろろを連れて来てくれました。
とろろはもう何十回も会っている子です。
何回か、うちで数日間お泊まりで預かったこともあります。
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<お泊まりの時の3頭のようす>

つまり龍之進にとっては鉄之介以外の、唯一慣れ親しんだわんこです。
えのきママの優しい配慮に感謝しました。
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<とろろも心配してずっとついていてくれました>

えのきママは「しんちゃん、また一緒に遊びに行こうね」と声をかけてくれ、
「また逢いに来るから早く元気になるんだよ」と言って帰って行きました。

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夜は私のベッドに寝かせました。
いつもそうだから、いつもと同じ場所に同じように寝かせました。

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龍之進はずっと眼を開けていました。
時折苦しそうな動きを見せました。
「しんちゃん、だいじょうぶ♪」の他に、
「おりこうさんだね♪」と言うと不思議とすぅっと動きが止まりました。

もう眼が見えていなかったかも知れません。
頭を撫でると条件反射的にまばたきをしましたが、
眼を突くような仕草で指を動かしても開いたままでした。
意識もあったかどうかはわかりません。

ベッドに横たわりながら一晩中、
昔一緒に行った温泉での話、お友達と泳ぎに行った話、鉄之介が初めて来た頃の話等をずっと聞かせていました。
「早くよくなって、またおとうさんやてつと一緒に温泉行こうね。」

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病院が翌朝9時の予約でしたので、万が一眠ってしまった時の為に一応7時45分に目覚ましをかけておきました。
朝なら車で15分ほどの距離ですからそれで十分でした。

一晩中時計と龍之進をかわるがわるに見ていました。
それらの最後に時計を見たのが7時22分。
「もう起きてしまおうかな」と思ったのを記憶しています。
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ふっと私の意識が途切れました。
連夜の睡眠不足のせいなのか、それとも龍之進が魔法をかけたのか、ほんの一瞬眠ってしまいました。

はっ!と思って時計を見たら7時33分でした。
わずか10分ほどでした。
反射的に龍之進を見ました。

「しんちゃん・・・?」

おなかが動いていませんでした。
胸に手を当てても、反応はありませんでした。

「!!!!!」
とっさに心臓マッサージをしました。
昔亡くなった犬の最期を看取った時、同じような状況になったので当時の先生に渡したら
そうしたからです。

「しんちゃん!しんちゃん!しんちゃん!しんちゃん!」
呼び続けながらマッサージをしていたその手がふと止まりました。

万が一、これで息を吹き返したとしてももう良くはならない。
無駄な延命をしたら、その分辛く苦しい思いを長引かせるだけ。
そんな思いがこみ上げてきました。

そぅっと龍之進を抱き上げ、胸に抱きかかえ、
「しんちゃん、ごめんね、おかぁさんウソついたね。
約束守れなくてごめんね。」と謝りました。
涙が止めどもなく流れました。
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いつものまんまるなかわいい目を開けたまま、
その小さな体からは永遠に命の灯火が消えていました。

抱きかかえたまま立ち上がり、まず既に起きていた母の部屋に行きました。
龍之進を抱いた私の姿を見た母は、
「もう出かけるの?」
と尋ねました。
小さく首を振った私は、「しんちゃん、頑張ったけど・・・ダメだった」
と答えました。

事情を悟った母に龍之進を渡し、抱っこしてもらいました。
世の中の祖父母となんら変わる事なく、目に入れても痛くないほどかわいがってくれた母。
その母に抱かれた龍之進、おばあちゃん子だった龍之進はまるでいつもの甘ったれの抱っこと同じように見えました。
Thank You for Tons of Your Love♪ Vol. 2_e0166336_19746100.jpg母とともに泣きながら、その体をいとおしく撫でました。

ひととき抱っこをしてもらうと、今度は隣室でまだ眠っている主人を起こしました。

「おとうさん、しんちゃん、頑張ったよ。でもダメだったの。」
と言うと一気に起き上がり、私から奪い取るように龍之進を抱き、胸に抱きしめ、号泣しました。
最期の様子を説明する私をもう何も言うな、とばかりに制し、泣いていました。
二人っきりにする為、おとうさんが起きたことが嬉しくてはしゃぐ鉄之介を連れて部屋を出ました。

*********************************

龍之進の最期は絶妙なタイミングでした。

ずっとずっと、一睡もしなかったのに。
しかもその20分後にはもう起き上がって支度をするところだったのに。
ほんのわずか、うとうとしたたった10分の間に一人で逝ってしまいました。

気が強くて強烈にプライドが高い龍之進のことです。
また私のことを必要以上に心配するとても優しい面のあった龍之進のことです。
よほど自分の最期を私に見せるのがイヤだったのだと思いました。

でももう少し長い時間頑張っていたら、あとわずか数十分でまた違う病院に連れて行かれてしまいます。
そしてそれ以降はもう頑張れない。
おうちから、みんながいる大好きな場所から旅立つには今しかない。
おかぁさんの悲しい顔は見たくない。
でも大好きな場所以外から逝きたくない。
そんな葛藤の末、私がほんのわずか気を緩めた瞬間に、好機とばかりに逝ってしまったのでしょう。

主人はショックで2時間くらい声が出なくなりました。
声が出ないので、筆談で渡してくれた紙切れにはこう書かれていました。

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「何時かわからないけど龍之進の遠吠えが聞こえた。『おかしいな』と思っていたら、
今度は鈴の音(子供の頃からずっと龍之進の首輪につけていました)が聞こえて、ふとんの上に重みを感じた。
『歩けるようになったのか?』と思ったけど何かあればおかぁさんが知らせてくれるだろうと思ってそのまま眠ってしまった。逢いに来てくれたのに、起きてあげなかった自分が許せない。」

龍之進は滅多に遠吠えをしません。
数回ほどしか聞いたことはありません。
その龍之進が、遠吠えをしたのを聞いたということでした。
よほどおとうさんに伝えたいことがあったのでしょう。
逢って、さよならを告げたかったのでしょう。

元々龍之進は前の犬を亡くして2年後くらいでしたでしょうか、
主人がみつけ、そのかわいらしさに一目惚れし、
ちょうど私の誕生日が近かったこともあってプレゼントに買ってくれた子でした。
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<生後6ヶ月くらいの頃の龍之進>


「あの時ぼくを見つけてくれて、おとうさんとおかぁさんの子にしてくれてありがとう。」
主人の夢枕に、そう告げに行ったのだと私は思いました。

主人は起きてあげなかった自分を責めましたが、
私はしんには主人を起こすつもりはなかったと思います。
ただただ、お礼と、そしてさよならを告げに行っただけなのだ、と。

私がほんのわずか、うたたねした瞬間に、
「今だ!」とばかりに逝こうと思ったけど。

でもおとうさんにもさよなら言わなきゃって。

だから起きなくて正解だったよ、おとうさん。
起きちゃったら今度こそ、大好きなおうちから旅立つチャンスを奪ってしまうもの。

筋書き通りだね、しんちゃん。
完璧主義のあなたらしいよね。

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by ChampagneGold | 2010-02-08 09:07 | 龍之進
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